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情動の書庫 -Emotional archive-

無料のオリジナル声劇台本置き場

作品の解説及び演出例

 ここでは台本のストーリー構成の解説や、演じる、または作品にするに当っての演出例を記載したいと思います。

 ですが、別にこれが正しいとかこういう風にやらなければならないとか、そういうことではありません。自由に解釈して自由に演じてもらうのが一番です。むしろ、先入観を持ちたくないというのであれば、見ないほうが良いかもしれません。

 しかし、台本を一読しただけで演じなければならない場合の多い声劇では、台本を自分なりに理解した上で自己演出をつけるのが難しいかと思われます。または、「ストーリーの全体を把握した上でシーンの意味と自身の役割に即した演技を考える」ということにピンとこない方も多いかと思います。

 これらを補助するために1例を書いてゆきたいと思いますが、あくまでも1例であり、「こんな考え方もあるんだ」程度に読んでいただければと思います。

理想的な女の子

 若い頃の恋愛は、とても身勝手で独善的で、誰かを傷つけることしか出来ませんでした。しかし誰もが通る道なのではないのでしょうか。そしてその多くは、大なり小なり取り返しの付かない傷を残します。

 構成図を見ていただけるとわかりやすいと思うのですが、一人の女の子に恋をした男達が夢中になりすぎて、結果として女の子を自殺まで追い詰めてしまいます。男達は決してストーキングなどをしていたわけではありません。ですが女の子は、チヤホヤされてのぼせるほど単純ではなく、同性に疎まれて傷つく程度に繊細だったようです。

 実はこの物語は、ラストシーンを除いて全て回想シーンです。女の子の墓前に集まった男達が、当時のことを心で反復している、という流れです。それを暗に示しているのが、No69〜No71のセリフや、ところどころにある激しい誇張(特にNo72〜)です。出来事の時系列は[彼女が自殺]して[男達が墓前にいる]ですが、構成的な時系列は[男達が墓前で][彼女が自殺した出来事を思い返す]となります。

 過ぎ去った事を思い返しているので、思い出の彼女がより美化されています。自分たちのことも大げさに表現されていますが、これは単に自分たちのことはどうでもよかったり、あるいは未だに当時の浅はかな自分を直視出来なかったりしています。

 そして演技的な部分の注意として、回想シーンであるということは劇中劇になります。劇中劇の基本は非常に大げさな演技をすることです。これは劇中劇以外の、通常のシーンと差別化を図る為です。差別化が出来ないと観て(聴いて)いて非常にわかり辛くなります。

 ですが、劇の殆どが回想シーンという構成ですので、演出的にあえて差別化しないという方法もありだと思います。どちらの方向性でやるかは、ちゃんと役者同士で意識を合わせておきましょう。

●冒頭 No1〜No15

 OPの様なものです。全体的に勢いが欲しいので、スタートダッシュがかかるようなBGMにしたつもりです。BGMに食われない様に大きく演技しましょう。

 物語的にはNo16から始まっても大きな差支えはないのですが、女1をここで登場させて観客に意識させないと中盤から後半が生きてこないかもしれないと思って用意シーンです。つまり女1の顔見世です。ここで女1の存在を上手くミスリードさせれば、良い意味で観客を裏切ることが出来るかと思います。

●序盤 No16〜No68

 この辺りは、楽しくやれれば十分です。メリハリがなくならない程度にテンポ良く会話をつなげます。女1はまだ大きく出てこない方がいいでしょう。淡々と振ってやってください馬鹿な男どもを。

●中盤 No69〜No100

 前述にもありましたが、No69〜No71はやや重要なセリフです。劇中劇よりメタな立場のセリフなので、前後のシーンとのメリハリのためにも含みを持たせて観客に違和感を持たせましょう。

 No72以降はBGMの通り、ノリノリで行きましょう。やり過ぎなくらい騒いでください。劇中劇中の劇中劇です(読みづらい)。このシーンは全体を通してのメリハリを付け、また、この後の展開部にギャップを持たせる役割を持ちます。なので、騒げば騒ぐほどよいです。

●展開部 No100〜No158

 物語の絶頂に向かってゆきます。男どもの勘違いも絶頂です。狂気のシーンです。恋愛時の精神は狂気と紙一重ではないかと思っていたりします。最初から飛ばさず、No158で絶頂に達するように徐々にテンションをあげていきましょう。

 男達はすでにテンションが上がってきますが、女1はNo128まで少し抑えます。ですが、序盤と同じ言葉で男達を振るセリフはしっかりと序盤と差をつけてください。

 No128の女1「…私が虐められていたことは知っているの?」は最重要セリフです。直後にBGMも入りますが、明らかに今までの女1とは違うことを表現する必要があります。このセリフから、女1の自殺までの狂気が始まるからです。やり過ぎても足りないくらい負の感情を込める必要があります。

 No128からは、No158まで一気に行きます。すごく叫びたくなるシーンですが、しっかりと感情を込めれば叫ばなくても成立出来ます。なので、叫ぶ台本だからと敬遠しないで!

 大変なシーンですが、僕はこういうのが芝居の、演技の醍醐味だと思っています。というか大好物です。このシーンがやりたかった台本です。

●終盤 No159〜Last

 BGMが消えてから、長めに余韻を持たせた方が良いのですが、声劇では長すぎるとセリフ忘れてるんじゃないかと疑われそうですね。さじ加減が難しいです。

 女1の自殺から何年も経過しています。傷は癒えずとも、泣き叫んだり自己嫌悪したりを乗り越えて、男達は墓の前で悲しい事件を思い返しているのでしょう。

 No176に向かって、男達の会話は徐々にモノローグへと変わってゆきます。最後に女1が長セリフで締めて、終了です。

 以上となります。ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございました。

 上記はあくまでも一例であり、拙作ですが皆様の解釈やアレンジで色々な形でやってみていただければ幸いです。

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