【タイトル】理想的な女の子 【登場人数】4人:♂×3・♀×1 【登場人物】男1 - 賢い   男2 - カッコいい   男3 - たくましい   女1 - 可愛い 【ジャンル】恋愛・シリアス 【あらすじ】理想的な女の子がいる       告白するがフラれる男3人       男達は彼女に釣り合う男になれるよう自分磨き、再度告白をする。しかし彼女は…… 【備 考 】叫び有り 男1 「その女の子は、理想的な女性だった」 男2 「美しく、可憐で、そして愛らしいその姿」 男3 「澄んだ瞳と鈴を振るような声」 男1 「天使の様な笑顔 妖精の様な佇まい」 男2 「僕らは一瞬で心を奪われた」 男3 「俺たちは一瞬で虜になった」 男1 「私はもう彼女の事しか考えられない!」 男2 「彼女だけが僕の全てだ!」 男3 「彼女と付き合えるのなら死んだって構わない!」 男1 「彼女を想えば勇気が湧いてくる!」 男2 「僕に活力を与え!」 男3 「俺を高みへと導いてくれる!」 女1 「それが私です    男性の庇護欲を掻き立て虜にし、勇気を湧かし、活力を与えて、高みへ導く    清純可憐な愛され女子、愛され過ぎた女子    それが……私?」 男1 「ああ、この気持ち、どうやって伝えればいいんだ」 男2 「切ない、切なすぎる。このままじゃ生きていけない」     男3 「愛しさで心が砕けてしまいそうだ」 男1 「ん?」 男2 「え?」 男3 「お?」 男1 「……貴様らまさか」 男2 「ひょっとして君たちも……」 男3 「お前らも彼女の事を!?」 男1 「なんてことだ! だが彼女なら何人ライバルがいても不思議じゃない」 男2 「そうだね。仮にその辺に先頭が見えない長蛇の列があったとして」 男3 「それが彼女への告白順番待ちだって言われても信じてしまうな」 男1 「まぁあれ程の可憐な美少女だからな」 男2 「彼女の素晴らしさがわからない男がいたとしたら、そいつはゲイか馬鹿さ」 男3 「そうだな、違いない……って!」 男2 「ん? どうしたんだい?」 男3 「ということは、今も彼女に手を出そうとしてる奴がいっぱいいるってことじゃないか!」 男1 「確かに! なんてことだ!」 男2 「そうだよ! あんなに素敵な子なんだから、いつ他の男が言い寄るかわからなよ!」 男3 「うおお、こうしちゃいられない! 今すぐに彼女に思いを伝えねば!」 男1 「あ、貴様、ちょっと待て!」 男2 「ぼ、僕が先に告白するんだ!」 男3 「馬鹿野郎! 恋は競争なんだよ!」 男1 「くそっ、先を越されてたまるか!」 男2 「僕だって!」 男1 「君の事が好きなんだ!付き合ってくれ!」 女1 「ごめんなさい」 男1 「そ、そんな……」 男2 「君に僕の愛の全てを捧げるよ!」 女1 「遠慮します」 男2 「ガーン!!」 男3 「俺の女になれ!」 女1 「お断りします」 男3 「ひぇええ!」 男3 「フラれてんじゃねーか」 男1 「お前もな」 男2 「てか、全員ね」 男1 「まぁ彼女ほどの女性なんだから、当然だったのかもしれないが……」 男2 「それでも、例えそうであったとしても……」 男3 「もう俺は彼女と結ばれる事はないだなんて……うぅ」 男2 「泣くなよ……ぐすっ、うぅ……」 男1 「あんな素晴らしい彼女から見れば、私たちなど……」 男2 「そりゃあ釣り合わないよ、天使の様な彼女に比べれば……」 男3 「そうだよな、まるで女神の様な彼女に比べれば……    ……比べれば? そうか、そうだ!」 男2 「ど、どうしたの?」 男3 「今の俺がダメなら、彼女に釣り合う男になればいいんだ!」 男2 「そんな、今更そんなことを言っても……」 男1 「いや、確かに告白してる男は多いが、    彼女が誰かと付き合ってると言う話は聞かないぞ!」 男2 「てことは」 男3 「彼女と釣り合う男になれば、彼女は振り向いてくれるはず!」 男1 「待て、彼女と釣り合う男になるのは私だ!」 男2 「い、いや、僕だよ!」 男3 「何を言う、俺だ!」 男1 「こうして」 男2 「僕らは」 男3 「自分を磨いた」 男1 「男に重要なのは知力と将来性!    一流の大学に行って最高の職に就けば女は惹かれるのだ!    見ろ、これが私の努力の結果だ! くらえっ!」 男3 「痛ぇ! お前、成歩堂みたいに紙を投げつけるなよ」 男2 「これは模試の結果かな?」 男3 「そうみたいだな……な、なんだと!?」 男2 「すごい! 全国トップだなんて!」 男3 「東大合格間違いなし、むしろフリーパスだって!?」 男2 「将来は医者でも弁護士でもなんでもおっけーって書いてある!?」 男3 「おい見ろ、内閣総理大臣が頭を下げて後任になってくれって頼んでるぞ!?」 男1 「はっはっは、見たか、これが私の実力だ! これで彼女は私のものだ!」 男2 「甘いね」 男1 「なに?」 男2 「男に重要なのはカッコよさ! ビジュアルさ!    努力して得たこの美貌とセンスとスタイルでどんな女性も僕に虜さ!」 男3 「けっ、そんなチャラチャラした男なんて……」 男2 「それはどうかな」 男1 「なっ!? 見つめただけで女が失神しただと!?」 男3 「ウィンクされた女は泡吹いて失禁してるぞ!?」 男1 「あいつが歩いてるだけで倒れた女の道が出来ている!」 男2 「ああ、なんて罪な男なんだ僕は……」 男3 「違うな」 男2 「なんだって?」 男3 「男に重要なのは体力! 頼りがいだ!    どんな時でも女を守れるタフガイに女はついてくるのさ!    見ろ、これが俺の力だ! うおおおおおお!」 男1 「んな!? あいつ、ビルを持ち上げやがった!」 男2 「そして空まで飛んだ!?」 男1 「しかもいきなり現れた巨大怪獣と戦うだと!?」 男2 「そんなバカな! 手から光線を発射して倒しちゃったよ!?」 男3 「はっはっは、どうだ見たか、これが俺の力だ!」 BGM F・O 男1 「こうして、私は彼女に釣り合う男になった」 男2 「どんな努力も、彼女の事を想えば苦ではなかった」 男3 「これでようやく彼女を迎えに行ける」 男1 「眉目秀麗で才色兼備な彼女こそ私に相応しい」 男2 「優しさと美しさを兼ね備えた彼女は僕とベストカップルだ」 男3 「慈愛と強さを芯に秘めた彼女は俺の生涯の伴侶であるべきだ」 男1 「君の」 男2 「全てを」 男3 「愛している」 男1 「君に相応しい男になった もう一度言おう、    君の事が好きなんだ。私と付き合ってくれ」 女1 「……ごめんなさい」 男1 「なぜだ! 君に釣り合うのは私だ!    私に釣り合うのは君だ!」 女1 「私はあなたに釣り合うような女じゃありません    私は立派な人間なんかじゃありません」 男2 「君に僕の愛の全てを捧げるよ」 女1 「……遠慮します」 男2 「どうして! 僕の美貌は君と一緒にいてこそ輝くんだ!    君の隣を歩けるのは僕だけなんだ!」 女1 「私はそんな素敵な女性ではありません    私は醜い人間なんです」 男3 「俺の女になれ」 女1 「……お断りします」 男3 「バカな! 俺が守るべき人は君だけだ!    俺を支える強さを持つのは君だけだ!」 女1 「私には守られるような価値はありません    私は心の弱い人間です」 男1 「何を言ってるんだ、君ほど素晴らしい人間はいない」 男2 「謙遜してるんだよね? 控えめな性格も君の魅力だよ」 男3 「本当の君の事は、俺が一番理解している」 女1 「……本当の私?」 男1 「ああ、そうさ」 男2 「なぜなら僕は」 男3 「ずっと君の事を想っていたから」 女1 「……私が虐められていたことは知っているの?」 男1 「え?」 女1 「私が周りの女性から虐められていたの事を、知っているの?」 男2 「まさか」 女1 「私があなたたちのせいで、他の女の子から嫌がらせを受けていたのを知っているの?」 男3 「ちがう」 女1 「何が違うっていうの!? 私はそういう女なの! 素敵なんかじゃない、    魅力なんかない、賢くなんかない、強くなんかない!」 男1 「そんなことはない! 君は素晴らしい女性だ! 君は何も悪くない!」 男2 「そうだよ! 他の女が悪いんだ! 君に悪いところなんてない!」 男3 「君が一番正しいんだ! 君に間違いなんてないんだ!」 女1 「やめて! 私はそんなじゃない! そんなのは私じゃない!    私にあなた達の理想を押し付けないで!    あなたの理想は私じゃない、誰でもない何かなの!」 男1 「違う! 君は私の理想の女性だ!」 女1 「勝手に人の事を決めつけて、勝手に理想の人にされて、    女の子からも嫌がらせされて、でも私は何も言えなくて、    部屋に閉じこもって泣く事しか出来なかった    嫌いだった、憎かった    私は私をこんな風にした人達が死ねばいいと思ってた!」 男2 「やめるんだ! 君はそんな事を言う人間じゃない!」 女1 「私はそんな人間なの! 自分じゃ何も出来なくて、    全てを誰かのせいにして、憎んで、恨んで、泣くだけ!    全部あなた達のせい!    あなた達が私をこんな風にした!    あなた達が全部悪いんだ!」 男3 「違う、こんなのは君じゃない! やめてくれ、本当の君を取り戻してくれ!」 女1 「本当の私ってなんなの? ねぇ、本当の私ってなに!?    誰も本当の私なんてみてくれないじゃない!    誰も私の事を理解してくれないじゃない!    誰かが本当の私を見てくれていたなら、私はこんな風にはなってなかった!」 男1 「いい加減にしろ! そんなのは君じゃない! 君なわけがない!」 男2 「君はもっと美しくて優しい女性なんだ! そうじゃなきゃならないんだ!」 男3 「これ以上俺を幻滅させるようなことを言うな!」 女1 「幻滅すればいいじゃない! 私は幻滅されるような女なの!    もう嫌、こんなのはもう嫌!    私は勝手な理想を押し付ける人が嫌い!    私は私を傷つける人が憎い!    私は醜い心を持つ私を殺してしまいたい!」 男1 「やめろ! 何を持っているんだ!」 男2 「そんな危ない物を持っちゃだめだ!」 男3 「早くそれを置け!」 女1 「嫌い、嫌い、嫌い!    無くなればいい! 全部無くなっちゃえばいい!    私も何もかも全部この世から無くなればいい!!!!」 男1 「やめろ!」 男2 「やめるんだ!」 男3 「やめろおおおおお!!!」 女1 「いやああああああああ!!!!」 男1 「……もう何回目だろうな    毎年この日、ここに集まるのは」 男2 「さぁね、もう、何度もだね」 男3 「いつも通り、ここで皆集まって」 男1 「あの時の事を振り返って、その罪を改めて刻み付ける」 男2 「身勝手な理想と希望を押し付けて、追いつめて、    彼女に彼女自身を失わせた罪」 男3 「自分たちの未熟も言い訳に出来ない、この罪」 男1 「彼女は、許してくれるのかな」 男2 「さぁね、わからないよ。だって……」 男3 「俺たち誰も、彼女自身の事なんて知ろうともしてなかったからな」 男1 「今は知りたくても」 男2 「彼女はもう、いない」 男3 「あの時、いなくなってしまった」 男1 「せめて祈ろう 彼女が今、安らかであることを」 男2 「決して消えない、この罪を背負って」 男3 「彼女がいたこと、彼女を狂わせ、大きな罪を負わせてしまったことを」 男1 「この胸に刻みつけて、生き続ける」 男2 「決して忘れられない、忘れてはいけない」 男3 「俺たちは今も、彼女を想い生き続ける」 女1 「私は彼らに傷つけられました    私は色々な人に傷つけられました    私は私の弱さを、受け止めることが出来ませんでした    私は私の弱さで、私を傷つけてしまいました    私は私の弱さで、彼らを傷つけてしまいました    決して消えることのない傷を    もう伝えることは出来ないけれど……    ごめんなさい    そして、ありがとう、今も私の事を想ってくれて    彼らが安らかに生きてくれることを、私は祈ります    本当に、本当に、ありがとう……」 終わり