連番 | 役・種類 | セリフ・内容 | 備考・メモ(書き込み可) |
1 | 男 |
「それは一見、ごくごく普通のメガネだった。
UVカット、超撥水コート付高機能レンズ、アジアンフィットのセルフレーム。
やや野暮ったさがあるものの、クラシカルな魅力にあふれるウェリントン型。
レトロ感を上手にコーデすれば、オシャレ上級者と言えるかもしれない
……いや、オシャレはどうでもいい。ネットオークションで見つけて衝動買い
したのには、別の理由がある。
まさか本当に、服が透けて視えるメガネだったなんて!」
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2 | BGM |
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3 | 男 |
「ネットオークションで服が透けるメガネを購入した結果www(ワラワラワラ)。
なんてスレッドを掲示板に立てて遊ぼうと思っていた俺は、届いたメガネを試しにかけてみると本当に自分の服が透けて視えていることに気づき、激しく動揺した。」
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4 | 男 |
「え? あれ? え!? なんで? 俺、服着てなかった!?
いや、感触、服の感触はある! え、なんで? どういうこと?」
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5 | 男 |
「あ、フレーム! フレームの外側には服がある!
つまりこれ、メガネを外すと……。着てる! やっぱ服着てる!
焦った〜、いつの間にか俺、全裸になってたのかと思ったじゃん!
さっきの宅配便、全裸で受け取ったかと思った! しかも配達の人、女の人だったからね?
最近多いよね、女性の配達員。マジ焦った〜!」
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6 | 男 |
「いやそんなことはどうでもいい。どういうこと? これは一体どういうこと? もう一度かけてみよう。
うん、透けてる。クローゼットの中は……、おお、見事にハンガーしか視えない。
外してみよう。うん、服がある。かけてみる。うん、服が視えない。というか、服だけ視えない。
鏡を見てみる。俺、全裸。外す。着てる。かける。着てない。外す。着てる。かける。着てない……」
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7 | 男 | 「落ち着け俺、落ち着くんだ。うん、そうだ、状況を整理しよう」 | |
8 | 男 |
「まず俺は、ネットオークションで服が透けるメガネを買った。そしてこの服が透けるメガネをかけたら、なんと服が透けて視えた。
そう、服が透けるメガネをかけたら服が透けて視えた。
……なんだ、当たり前の事じゃないか」
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9 | 男 |
「って当たり前なわけがあるか!
え、なに? 最近の高機能レンズってこんな機能が付いてるの?
すごいな、メガネ技術はそんなところにまでたどり着いていたのか……
ってんなわけあるかーい!」
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10 | 男 | 「いかん、動揺しすぎて自分が何を言っているのかわからなくなってきた。落ち着け落ち着け」 | |
11 | 男 |
「……まず、どういう原理かわからないけど、このメガネは服が透けて視える。このメガネは俺が買った物だ。
だからこのメガネは、俺が使うことが出来る」
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12 | 男 |
「と言っても、これをかけてどうしろって話だよな。何が楽しくて自分の裸を眺めなきゃならないんだよ。
ヨーコちゃんの裸が見れるわけでもあるまいし……」
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13 | 男 |
「見れるじゃん! バカか俺、見れるじゃん! このメガネを使えば、あのヨーコちゃんの、は、はだ、裸がっ!
俺が密かに憧れていたテニス部のアイドル、ヨーコちゃんの裸が見れる!
ああ、溢れる! こぼれ出す! 俺のリビドーが! 待っててね、ヨーコちゃん! 今すぐ見に行くよ!」
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14 | SE |
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15 | SE |
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16 | 男 |
「うっかりこのメガネをかけたままだったせいで、か、母ちゃんの全裸を見てしまった……。
ありえねぇ、ありえねぇよ。なんであんなところで寝てんだよ母ちゃん。しかも大股開きで……」
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17 | 男 |
「いや、心の傷は大きいが、おかげで冷静になれた……。
このメガネは素晴らしいが、同時に危険を伴う諸刃の剣だ。体良くヨーコちゃんの裸だけを見れるように考えなければ。
いや、もちろん男として他の女子の裸も見たいけれど、うっかりブス島やデブ山なんかの裸を視界に入れてしまったらトラウマだ。
これ以上トラウマを増やしてはならない。学習しなくては」
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18 | 男 |
「というわけでまずは、このメガネでヨーコちゃんの裸だけをみる。これが俺のヨーコちゃんに対する 熱い想いだ! パトスだ!
さっそくヨーコちゃんの動向を探らねば。
えーっと、そうだユウジ。あいつはヨーコちゃんと同じテニス部だ。あいつに聞いてみよう」
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19 | ト書き | ユウジにLINEを送る男 | |
20 | 男 | 「『ヨーコちゃんは今どうしてる?』 送信っと」 | |
21 | SE |
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22 | 男 |
「返信早いなあいつ。部活中じゃないのかよ。えっと、なになに。
『部活中に決まってるだろ今は女子がコート使う番だから、そこで練習してるぞ』
なるほど、テニス部だから部活中か。当たり前だな!
どうもまだ俺は冷静じゃないようだ。落ち着いて考えなければ」
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23 | 男 |
「しかし、テニスコートで練習中か。実に都合がいいな。コートは屋外だから、外から眺めていても全く不自然ではない。
しかも練習中なら、きっとヨーコちゃんのあのロリ顔に似合わぬ巨乳が、
バインバイン……、バインバイン……、バインバイン……、バインバイン……。
正にビックウェーブ! むしろアルマゲドン! もはやカタストロフィ!」
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24 | 男 |
「この壮絶な光景を、俺はコートの外から眺めるだけで満足出来るのか?
否、もっと近くで見たい!
しかし、流石にコートの中にまで入って行くわけにはいかない。どうすれば……」
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25 | 男 |
「そうだ、ひょっとして双眼鏡越しでも透けて視えるんじゃないだろうか!
多少怪しくなるけど、バインバインを大迫力で見るためには仕方ない。えっと、どこにやったっけな、双眼鏡……」
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26 | BGM |
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27 | ト書き | メガネが光る 男はそれに気付かない | |
28 | SE |
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29 | 男 |
「……こんなことして、いいのかな。これってつまり、覗きじゃないか。もしこんなことがバレたら、間違いなく俺は変態と呼ばれるだろうな。社会的に終わる。退学になるかもしれない……。
ヨーコちゃんも、怒るかもしれない。いや、泣くかな。少なくとも、気持ち悪いとは思われるだろうな……。
もしヨーコちゃんからそんな風に思われてしまったら、俺……」
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30 | 男 | 「それでも俺は見たい。どうしても見たい!」 | |
31 | BGM |
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32 | 男 |
「好きな女の子の裸が見たくない男なんて、いるわけがない!
よく考えろ、そもそもバレるわけがないんだ。だってこんな、服が透けて視えるメガネなんてものが存在すると思う奴がいるわけがない。
傍から見れば、ただメガネをかけて見てるだけなんだ」
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33 | 男 |
「そう、バレるわけがないし、バレなければいいんだ!
仮に俺がこのメガネでヨーコちゃんの裸を見ていたとしても、その様子はヨーコちゃんにとって、ただ普通に服を着ている状態の姿を見られただけとしか認識できない。
彼女の主観的事実として存在しないのであれば、それは彼女の内的宇宙に存在しないわけで、周りから見てもバレるわけがないのだから、客観的事実も存在せず、つまりは彼女の外的宇宙にも存在しない。ということはこの世界にそんな事実は全くもって存在しないという事なんだ!
それでありながら俺は彼女の裸が拝め、誰も損をせずに幸せになれる、
まさに理想的にして究極的な行為! 主観主義万歳!」
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34 | SE |
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35 | 男 |
「うおっ、びっくりした。少し自分の世界に入りすぎてしまっていたな。えーっと、ユウジからのLINEか。
まずい、まさか女子のテニスコート練習が終わってしまうのだろうか? 頼む、カタストロフィに間に合ってくれ!
えっと、なになに……」
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36 | 男 |
「『つーかお前、ヨーコが好きなの? あいつヤリマンだって噂だからやめといたら?』
……何言ってんだこいつ!? あんなに純情で可憐なヨーコちゃんがヤリマンなわけないだろうが!
牛丼見ただけで、『牛さんが可哀想……』って泣いちゃう様な女の子なんだぞ!
てめぇこのクソユウジがヨーコちゃんを悪く言いやがって死ねこのカス、クズ、ハゲ、ボケ、童貞、うんこ、うんこ、うんこ! 怒りのスタンプ、スタンプ、スタンプ!」
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37 | SE |
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38 | 男 |
「まだ懲りねぇのかあいつ、返信してきやがって。なになに……
『ふざけんなてめぇ、親切で言ってやったんだろうが。だったら証拠掴んでやるよ!』だと?
なにが親切だ。根も葉もない噂で煽ってくるのが親切かよ。何が証拠だ。そんなものあるわけねーだろ。
本当に最低で最悪なやつだなユウジは。全国のユウジさんに泣いて土下座して謝れこのやろう。」
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39 | 男 |
「本当に最低で最悪……。あれ? じゃあ裸を覗こうとしている俺はどうなんだ……。
いや、いやいやいや、悪口を言ってるユウジとは違う。あんな噂がヨーコちゃんの耳に入ったら、ヨーコちゃんは傷ついてしまう。
俺はヨーコちゃんを傷つけるつもりなんて露ほども無い!
……でも、もしバレたらヨーコちゃんは傷つくのかな。」
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40 | 男 |
「いや、絶対バレないんだから傷つけることは無いんだ。うん、そうだ。問題ない。
それより、双眼鏡越しでも服が透けて視えるか確認しないと。
というか確か、鏡で視ても透けてたよな。だから多分、大丈夫なはず。念のためもう一度姿見で確認してみよう」
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41 | 男 |
「よしっ、鏡の中の俺は見事に全裸だ。これならきっと、双眼鏡でも大丈夫だろう。
ふへへ、もうすぐヨーコちゃんも、この鏡の中の俺の様に素っ裸に……。
今の俺の様に、素っ裸に……」
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42 | BGM |
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43 | ト書き | メガネが光る 男はそれに気づかない | |
44 | SE |
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45 | 男 |
「撫で肩、細い腕、アバラの浮いた胸、すね毛だらけの足、股間からぶら下げた男性器……。
全ての服を剥ぎ取られた鏡の中の俺は、とてもみすぼらしく、不安な姿だった。
見栄も格好も主義も主張も全部剥ぎ取られた全裸の俺。
誰にも見せない、誰にも見せたことのない、誰にも見せるつもりもない、一番弱々しい姿の俺。
ヨーコちゃんは、自分のそんな姿を人に見られたいだろうか……」
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46 | 男 |
「……こんなにも無防備な裸に、人は服を纏う。それは尊厳だ。無防備な体を固め、守り、主張する。
服は、人間の尊厳そのものなんだ……」
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47 | 男 |
「人は他人に裸を晒さない。それを行うのは、お互いを信じて愛しあう恋人同士だけ。
俺は彼女の恋人ではない。それなのに、本人が望まずして裸を覗くという事は、その人間の尊厳を踏みにじる、最低の行為だ……」
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48 | 男 |
「主観的事実は、存在する……。俺の、この俺の主観的事実として存在する……。
もし俺がこのメガネで彼女の裸を覗いたとしたら、彼女にバレなくても、周りの誰にもバレなくても、俺が彼女の尊厳を踏みにじったという事実が俺の主観に残り続ける……」
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49 | 男 | 「最低だ……。俺は、最低だ……」 | |
50 | 男 |
「は、ははは……。本当に最低だよ俺は。
何が最低ってさ、こんな重大なことに気付いて、こんなに落ち込んで、最低な行為だってわかっているのに……」
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51 | 男 | 「それでも、ヨーコちゃんの裸が見たいという気持ちが無くなるわけじゃないって言うさ……」 | |
52 | SE |
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53 | 男 |
「……ユウジか。
『色んな奴に聞いたら、皆その噂知ってるって言ってるぞ。ヨーコヤリマン確定。俺もヤラせてもらうかな』
……相変わらず、噂だけでこんなこと言ってるのか。本当に呆れるやつだ」
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54 | 男 |
「でも、俺もこいつと変わらない。
いや、自分の愚かしさを理解してなお、こんな醜い感情を持つ俺の方が……。
俺の方がずっと、狭量で偏狭で低劣で卑俗な人間なんだ……」
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55 | 男 |
「俺はこいつに何も言えない。何かを言う資格なんてない。いいさ、もう……。
『好きにしろよ』……送信。
これでいいんだ。俺にはヨーコちゃんを守る資格すら無いんだ……」
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56 | 男 |
「……気付きたくなかった。自分の愚かさなんて。
知りたくなかった。自分の浅ましさなんて。
認めたくなかった。自分の弱さなんて。」
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57 | 男 |
「メガネさえ……、こんなメガネさえ無ければ、こんな気持になんてならなかった!
お前さえ無ければ、理解してなおどうしようも出来ない辛さを味わう事にはならなかった!
これから先、俺はどうやって生きていけばいいんだよ! お前さえ、お前さえ無ければ……!」
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58 | ト書き | メガネが光る 男は初めてそれに気づく | |
59 | SE |
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60 | 男 | 「なんだ……? メガネが……光った!?」 | |
61 | SE |
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62 | 男 | 「そうか、お前はそのために俺の元に来た……、いや、来てくれたのか」 | |
63 | BGM |
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64 | 男 | 「このメガネは、人の裸を覗くメガネではなかった。このメガネは、自分の裸をさらけ出すメガネだったんだ」 | |
65 | 男 |
「人間の尊厳と、人間の弱さを教え、人としてのあり方、道徳律を導き、リビドーをイドから超自我へと昇華させる。
お前はそのために俺の元に来てくれたんだな……」
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66 | SE |
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67 | 男 |
「ああ。わかってる。弱さと愚かさを受け入れて、それでも強く、正しく生きていくよ。
それはお前が……、いや、君が教えてくれた事だから」
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68 | SE |
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69 | 男 | 「次の人の元へ行くんだな。わかったよ。俺が初めて君と合ったときと同じように……」 | |
70 | SE |
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71 | 男 |
「君をネットオークションに出品した。俺はもう大丈夫。
君は次の人の元へ向かってくれ。
君と出会う前の、俺の様な人間の元へ……」
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72 | SE |
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73 | 男 | 「……さようなら。きっともう、再び出会うことはないんだろうな。本当に、ありがとう……」 | |
74 | BGM |
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75 | SE |
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76 | 男 |
「ユウジか……。
ユウジには本当にひどいことを言ってしまった。あいつはあいつなりに、俺を案じてくれたっていうのに。ちゃんと謝らないとな」
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77 | 男 |
「ん? なんだ、コレ。ハメ撮り……。エロ画像? なんであいつ、こんなもの送ってきたんだよ……。
……ん? この画像の男って……、ゆ、ユウジ!?
え? なんで? え? じゃあこっちの女の子は……」
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78 | 男 |
「ヨーコちゃん!
え? なんでヨーコちゃんが!? え? え? ユウジとヨーコちゃん!?
裸? なんで? え、なんで? どうなってるの?」
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79 | SE |
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80 | 男 |
「『やっぱりヨーコはヤリマンだったよ。誘ったら簡単にラブホについて来やがった。これ証拠写メな』
って、ええええええええええええ!? ちょ、ヨーコちゃん本当にヤリマンだったの!?
え、ええええええええ!? どういうことおおおお!?
てかヨーコちゃんの裸! これ、ヨーコちゃんの裸!
見ちゃったじゃん俺! ヨーコちゃんの裸を! 見ちゃったじゃん!」
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81 | SE |
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82 | 男 |
「『それとヨーコはさ、人に見られるの好きなんだってさ。だからこの写メ送ったんだぜ』
ってえええええええ!? 好きなの!? ヨーコちゃん人に見られるの好きなの!?
尊厳! ヨーコちゃん、尊厳は!? ヨーコちゃんの尊厳は!?
ちょ、ヨーコちゃあああああああああん!!!!!!」
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83 | BGM |
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84 | BGM |
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85 | ト書き | 終わり | |